やくも
闭关~~~~~~~
级别: 风云使者
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空は灰色だった
雪が降っていた
真っ白な雪
世界を白く染めていく
人に触れると溶けてしまう
人の体温は雪には温かすぎるからだ
白
ただ虚無を表すように
黒
俺は白に包まれていた
蒼雪
「…雪か」
雪は悲しい精霊の舞
美しい白い世界を造りだしては、消えていく
子供が作った雪だるまも、芸術家がつくった雪の彫刻も、数日後にはただの水となり、無くなってしまう
何も残らない
何も残さない
そんな雪が儚くて、何かと重なる
「…雪も人間も同じだな」
そうだ、雪と重ねて見ていたのは人間だ
人間だって最後には何も残さない
何も残らない
死んでしまったら、今まで必死でやってきたこともその瞬間、全ての意味を無くす
俺は、何のために生きているんだ…?
「人は死に向かって生きている。それは時間が動いているからだ…。
俺の中の時間は、遠い昔に止まっちまったけどな…」
どうして俺は生きているんだ…?
「…ったく、どうしてこう俺はマイナス思考なんだか…」
雪を見たくらいで大げさなこと考えているなと自分でも思った。
こんな日はもう少しプラス思考を働かせられないものか。
雪を見たら最初に『わぁ綺麗』とでも言ってそこら辺を駆け回って…ってそんな歳でもねぇし。
雪なんて今考えたら寒いだけじゃん。別にここまで考える必要ねぇよ。
「あー、早く帰りてぇ」
俺は寒いのに何故か外を歩いていた。
理由は一つ。
食料の買出しだ。
何週間分もあったはずの食料が何故か一日でなくなってしまった。
理由は一つ。
能天気娘アルル・ナジャとその相棒、能天気生物カーバンクルに食われてしまったからだ。
昨日アルルと勝負した。
やはり勝てなかった。これは俺が弱いのではなく光と闇の関係だからだ。
その時俺は気を失っていたらしい。寒いからといってアルルが俺を空間転移で送ってくれたらしい。
…と、ここまではいい。送ってくれたことには感謝してる。だが…俺はあいつらを甘く見ていた。
俺が目を覚ましたとき、すでに手遅れだった…。
目の前にはすごい量のカレー、カレー、カレー、カレー…ってこんなに食えるか!!
アルルは笑ってこういった『おなか減ったからシェゾの食料使っちゃった。てへ☆』
てへ☆じゃねぇよ…。
結局、俺はその大量のカレーを一杯しか食えなかった。
というか、アルルとカーバンクルのすごい食欲に見ているこっちが食う気うせた。
何故、空間転移で買出しに行かないのかって?
理由は一つ。
昨日の勝負で魔力を使いきってしまったからだ。
…で、今に至る。
「少しは遠慮ってものを知れよな。まったく…」
今頃あいつは『わぁい雪だ!』とか言って嬉しそうに走りまわってんじゃねぇの?
「わぁい!雪だ!」
…いた。案の定、俺の勘は当たった。嬉しそうに雪の中を駆け回っていた。
無視しよう。あいつに関わるとロクなことがねぇ。
「あー!シェゾー!どこ行くのー?」
無視。
「ちょっとー!聞こえてるー?」
無視。
「変態シェゾー!」
「誰が変態だ!!」
あ。
「やっぱ聞こえてたんじゃないか!」
…やってしまった。
アルルが走ってきた。
「…俺は忙しい。今日はお前にかまってられない」
そう言ってその場を立ち去ろうとした。
「待って!!」
「ぐえ!!」
こいつの癖。
いつも俺が行こうとすると、小さい体で一生懸命俺のマントを引っ張り、首を絞める。
「ゲホゲホ!!何だ!!」
「いや、別に用ってほどの用はないんだけどね」
なら首絞めるな!!と心の中で叫んだが、言葉にはしなかった。
どうせ『キミが無視するからでしょ』とかなんとか言われるからだ。
「用が無いんだったら俺は行く」
「だーかーらー!!ちょっと待ってよ!」
アルルはその小さい体で俺の腕を引っ張る。
こんな力じゃ俺は動かせないぜ。
…と思いながらも、何故か足は止まってしまう。
「…わかったわかった。で、なんだ?」
「一緒に遊ぼう」
「はぁ?」
俺は訳がわからないまま、アルルに手を引かれていった。
アルルの手は温かかった。
俺には温かすぎるくらい、温かかった。
雪だったら、きっと溶けてたな。
「ほら、見て!キレイでしょ?」
アルルに連れていかれた先は、真っ白な世界だった。
「街の雪より綺麗なんだ。きめ細かいし、誰にも踏まれてないよ」
ここは街から離れた草原だった。
いつもは緑色の芝生が生えている静かな場所。
今は白い世界。
白
いつもより静けさが増す。
白
何も無い、単純な色。
虚無のように
誰も、立ち入れないくらい綺麗な『無』の世界
「ここってシェゾが好きな場所なんだよね?」
確かにここは好きだ。
静かだし。読書にも集中できる。でもそれだけ。場所が好きなわけではなく、静かだから。
「ボクもここ好きだよ」
アルルは微笑んだ。
「ここにくるとね、風の声が聞こえるんだ。それに夜は星がとっても綺麗でさ。
冬は…今みたいに真っ白な世界になるし…」
風の声が聞こえるのも知っている。星が綺麗なのも知っている。
だが…こんな『無』の世界ができるのは知らなかった。
雪が降ると寒いから外出は必要最低限の距離しかしない。もちろんこんなところにも行かない。
「キミって寒がりだから絶対雪が降るとこういうとことか来ないでしょ」
「…まぁな」
「へへっ!」
アルルは無邪気に笑って白の世界に走っていった。
手で雪をかき集めて、楽しそうに何かを作っていた。
「よく雪でそんなにはしゃげるな」
「うん!ボク雪大好きだから!」
そう言ったアルルが作っていたものは、小さな雪だるまだった。
…雪なんて、最後には何も残らないのに
「ねぇシェゾ、雪って溶けたあとに何を残すと思う?」
その質問をされたとき、こいつ、俺の心が読めるのか?なんて思ってしまった。
「…さぁ。何も残らないんじゃないか?」
「やっぱりキミならそう言うと思ってたよ」
アルルは雪だるまを作り終え、こちらに向かってきた。
「でもね、違うんだ。雪はちゃんと残していってくれるんだよ」
「何を?」
「形は何も残らないけどね、思い出はずっと残っているんだよ」
思い出…?
「雪だるまだってさ、作ってるときはすごく楽しいじゃん。だけど最後には溶けてなくなっちゃう…。
あんなに頑張って作ったのに、なんか悲しいでしょ?でもね、色々な想いを残してくれた。
楽しかったことも、悲しかったことも」
雪が溶けたあと、何が残る…?
人が死んだあと、何が残る…?
「…想い…か」
「どうしたのシェゾ?」
「いーや、なんでもない。ただ自分がいなくなったあとは何が残るのか考えてただけだ」
「…人も…雪と同じで色々残してくれるよ」
俺が死んだら、やはり残るのは想いだけ。
形として残しても、虚しいだけ…
「大切な人がいなくなったとき、はじめて気がつく想いだってあるんだ…。
その想いはその人が残してくれた永遠の宝物…。形で残すことができないものを
心の中にずっと残して消えていくんだ…雪も、人間も…」
「…形として残す人生よりも、形も何も残さない人生の方が綺麗な生き方かもな」
「形として残すのも悪くないよ。だけど形だけ残っても…」
「形だけ残っても、ただ虚しいだけ」
アルルは驚いたようにきょとんとシェゾを見た。
「キミ、いつも思ってたんだけど人の心が読めるの?
なんだかいつもボクが考えてること先に言われちゃうんだけど」
「読心術なんか使えねぇよ。ただそれはいつもお前の考えてることが俺と一緒なだけだ。
お前だって俺が考えてることにいつも答えるし、俺のほうこそお前に心の内読まれてるんじゃないかって思ってた」
そう言うとアルルが声をあげて笑った。
「結構似たもの同士だよね、ボク達って」
「そうか?」
俺もつられて笑ってしまった。
その後、しばらくしてアルルは何かを思い出したようだ。
「あっ!そうだ!!ボク、ウィッチの所に行かなきゃいけないんだった!!
雪が降ってはしゃいでたらすっかり忘れてたよ!!」
そう言ってアルルは急いで街のほうへ走り出した。
「じゃあね!!シェゾ!!」
そう言って彼女はだんだん遠くなっていく。
もう一回、アルルは立ち止まって俺のほうへ叫んできた
「今日は付き合ってくれてありがとう!なんだかとっても楽しかったよ!!
これも雪が残してくれた『想い』だね!今日のこと、大切に心の宝箱にしまっておくから!」
とても幸せそうに微笑んで、彼女は帰っていった。
白の世界に俺は一人
『無』の世界に取り残されたように静かな白に包まれて
白の世界に黒が一人
雪とは正反対の黒
それが俺
「もし俺に死ぬことが許されたのなら」
闇の呪縛に囚われた俺は、死ぬことさえ許されない
こうして一人、永い時を生きてきた
きっと俺が昔、闇の呪縛に囚われていなかったら
アルルにも会えなかっただろう
それだけ昔に産まれた俺が、今こうして生きているのも闇の呪縛のせい
死なない、死ねない、許されない
悲しき闇の生贄
「この雪のように、溶けて消えてしまいたい」
形も何も残さずに
光の中で消えていきたい
真っ白な雪のように
「溶けてしまえるなら、温かいあいつの手で溶けてしまいたい」
俺には温かすぎる、あいつの手 俺には眩しすぎる、あいつの光
その中で消えてしまいたい
「俺の中の時が動きだしたとき、俺はあいつと同じ時を共に生き、共に同じ時の中で朽ちていきたい」
だけど無理
俺は黒
雪は白
雪のように溶けてしまいたいと願っても
俺は雪のように消えることさえできない
それが黒
それが俺
雪とは違うから
あいつとは違うから
雪は白
俺は黒
あいつは光
俺は闇
想いだけ…残して消える…雪のように、降り積もる想いはどうすればいい?
降り積もった想いは雪のように、光の中で溶けてくれるだろうか?
雪のように、消えてしまうのだろうか…?
「…日が出てきたな」
どれくらいの時間、『無』の世界を見つめていたのだろうか。
まぁ、俺にとっては時間の流れなんて関係ないんだがな。
雪が止んで、日が射し始めた。
暖かい光が、白の世界を照らしていて眩しかった。
『これも雪が残してくれた『想い』だね!今日のこと、大切に心の宝箱にしまっておくから!』
何故か脳裏に甦ってきたあいつの声と笑顔。
「雪が残してくれた想い…か。あいつもあんな顔して結構色々考えてるのかもな」
闇の呪縛も悪くねぇかも。
これのおかげであいつと会えたわけだし、いろんなことも見てきたし、色々知った。
これからのことなんて考えないで、今のことだけ考えて生きよう。
雪だって、溶けたあとのこと考えるより、雪の中で遊んでいる今を考えたほうが楽しいからな。
俺の人生、それと同じだ。
悲しいことより、楽しい今をって、あいつも前に言ってたしな。
俺の人生、雪と同じ
雪のように溶けることはできないけど
溶けることより、溶けてない今
それを考えて生きていく方が、楽しいからよ
「そろそろ俺も行くか…。あ、そうだ」
俺はアルルの作っていた小さな雪だるまを思い出し、雪だるまの場所に向かった。
「せめて、溶けない今が長続きするように」
その小さな雪だるまを日が当たらない、木陰ができる場所へ移動してきた。
光が当たらない闇は、雪にとっては溶けない空間
たまには闇もいいかもな。
そうして俺は白の世界を後にした。
ただ残ったのは、木陰の闇に守られている小さな雪だるまだけ。
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[1122 楼]
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Posted: 2006-05-09 10:35:51 |
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